*PART3.分娩室*
陣痛に苦しみながら、分娩台に上がる。
妊娠中に受けたお産の講習会で習ったことを思い出す。
グリップを握り…痛い、痛い、痛い…容赦なく陣痛が襲ってくる。
助産師さんは足元で何やら準備をしつつ、わたしの様子をチェックしている。
「どう?いきんでみる?」





はい、勿論!産めるのならば、是非にでも。

「息を吸って~止めて、はい、おへその方を見ながらいきんでー!」

うぅーーーーーっ、(顔の血管が切れそうー)

「ダメだ。まだいい陣痛がつかない」と助産師さん。

え…まだダメなんですか?こんなに、こんなに激しい痛みに襲われているのに、
分娩台に上っているのに、まだダメなんですか?

ここで助産師さんは「ちょっと待っててね」という言葉を残し、
カーテンで仕切られた分娩室から出て行ってしまった。
お産はまだ?…いつまで続くの?物凄く心細くなっていた時、
先ほど助産師さんが閉めていったカーテンが開いた。
ふと見ると、淡い黄色のシャワーキャップのような帽子と白衣(色は黄色だけど)
を身に着けた夫が!

「ど、どうしたの?何で入ってこれたの?」

ナースステーションに行き説明をすると、分娩室まで案内され、
「よろしかったら」と入室を許可されたらしい。

妊娠中、お産には絶対に立ち会って欲しくないと考えていた。
陣痛で苦しんでいる姿も見せたくないと思っていた。

でも今は、夫の存在が心強い。
淡い黄色のシャワーキャップのような帽子と白衣(色は黄色だけど)姿で
心配そうに立ち尽くす夫が、おかしくもあり、逞しく見えた瞬間だった。

「ねぇ、ずっと居てくれるよね?」

その後はこれ幸いと、腰を擦ってもらったり、お水!チョコレート!
そう、分娩室に持ち込んだ荷物の中にはチョコレートがいっぱい
入っていたのです。腹が減っては戦は出来ぬ!と言うではありませんか。
(こればっかり)

夫の存在をこれ幸いと思ったのはわたしだけではなかったらしく、
この日はお産が重なっていて、助産師さんは大忙し。
今すぐには産まれないと判断されたわたしは、分娩台の上でも
更に陣痛に耐え、「その時」を待つことになった。
あぁ、本当に夫が居てくれてよかった。
ひとりじゃなくてよかった。

どのぐらいの時間が経過したであろう。
5分おきぐらいの陣痛がずっと続いている。
身体が内側から引き裂かれるような痛みに襲われている。
でも、その程度ではいけない、赤ちゃんは産まれないんだそうだ。
もっといい陣痛がつかないと…そのために出来ることがあるなら、
なんでもするのに!

時計を見る。
午後11時…分娩室に入ってから既に4時間以上経過している。
いつになったらお産がはじまるのであろう。
いつになったら赤ちゃんに会えるのであろう。
そんなことを考えていたら、助産師さんが戻ってきた。

「なかなかいい陣痛がつかないから、陣痛促進剤を使うということも
考えてみましょう」とのこと。

陣痛促進剤を使うに当たっての説明書きを手渡される。
助産師さんは「目を通しておいて」という言葉を言い残し、
また出て行ってしまった。

夫とふたりで説明書きを読む。
顔を見合わせながら、一緒に考える。
母体にも赤ちゃんにも滅多に危険なことは起こらない。
それでも稀に…万が一に…の可能性は0ではない。

赤ちゃんの為にはどうするのが一番いいのであろう。
この間、いろいろと話し合った結果、誘発剤を使うことにした。
誘発剤を使わなければ、今夜は生まれることはないであろうから、
一度ここでリセットをして、(陣痛室に戻る)また明日の朝…
冗談じゃない。そんなのは絶対に嫌だ!早く、早く開放されたい…。
これが正直な気持ちであった。

決意を持って、助産師さんを待った。
そこへタイミングよく助産師さんが現れた。
「陣痛促進剤を使います。お願いします」

するとなんというタイミングの悪さで…
「ごめんなさい。緊急帝王切開の手術が入って、先生が今来られないの。
助産師も今忙しくなっちゃって…もうちょっとだけ待ってて!」
と言われてしまった。

緊急帝王切開、それでは仕方が無い。
お隣の部屋で手術が開始されたみたいだ。
何やらバタバタ、ざわめきが聞こえてくる。
無事に赤ちゃんが生まれますように。
今、正に帝王切開で生まれてくるであろう赤ちゃんのことを思い、
自分のおなかに手を当てたところ、ドカッ!ボコボコ!
すごい勢いでおなかの中の赤ちゃんが暴れた。一緒に応援しているの?

お隣から男性医師や助産師さんの声が聞こえてくる。
「はい、赤ちゃん産まれますよー」

オギャー!ンギャー!

産声が聞こえた!
あぁ、よかった。力強い産声に感動で思わず涙が出た。
前日、陣痛室に居た時にも分娩室から聞こえてくる産声を何度も聞いた。

「はい、次で赤ちゃん産まれますよー!」

今度こそわたしの番だ。

・後でわかったことですが、この時緊急帝王切開を受けたのは
前日陣痛室で一夜を共にした人でした。

この人とはその後もいろいろなご縁があり、
退院後もお付き合いが続いています。

ママ友というより戦友といった感じ。
子供も同じ歳、ママ同士も同じ歳。

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by sybilization | 2007-09-26 13:00 | report(delivery)
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